旅のお土産話トップへ戻る   旅のお土産話 vol.8

=HINANO曳航=
3月18日(土)
待ちに待った、HINANOが曳航される日。
衛星携帯電話が通信不可となる日、でもあります。
コーチャン艇長は未明、月明かりの中で作業していました。
ロープ取り回しの最終チェックです。


ログブックより

07:00 マイクロ・グローリー、パス通過、HINANOのかなり近くに投錨。
 甲板長来艇し、ロープをチェック。「Very Good!」
 マストの根元から4本、ウインチ(巻き上げ機)に2本づつ4本、
 合計8本のロープをバウ(船首)に集め本船の曳航索に結合する仕組み。
 セールやブームなど重い物は本船で預かってくれた。
 錨と鎖は最後だ。波に突っ込まないよう、船首はできるだけ軽くしたい。
 コーチャン、まだまだ思案顔。
 チーフ宅へいよいよ最後の挨拶に行き、でっかいシャックルを借りてきた。
 8本のロープをこれにひとまとめにし、海上で曳航索に繋ぐ算段。
 この特大シャックルは、小舟の錨に使われてて、元は座礁した
 トロール船の漁網用とか。
 昨日から「コイツ」に目を付けていたという。さすが、コーチャン!!

09:25 抜錨、足舟3バイ縦列でリーフ外まで曳航。

10:24 パス通過、外洋に出る。見慣れた島々が遠のいて行くが、
 「別れの感傷」は不思議とわかない。
 「またね」の気分。それより曳航という難題!が目前にあるのだ。
11:15 曳航開始。ローリング、ピッチング激しく、薬は飲んだものの
 私は早々にマグロ状態。
 「これが悪名高き曳航の揺れなのか・・・ガマン、ガマン」
 そのうち揺れが収まった。とても静かに曳かれている。
 「・・・ン?コンナコトモあるんだ」ホッとする。

13:50 エマージェンシー・ラダー流失。
 艇速3〜4ノットが限度の非常時入港用に考案された舵。
 目下、艇速7〜8ノット。シャフト代わりのスピンポールが、
 刃物で切られたように海面ギリギリでスパッと切られ、
 ラダーもろとも流失。流水のチカラ、すごい。

曳航される艇を安定させるため 200mのロープを流す。
 団子状にした鎖10mをロープの中程に固定し、ロープエンドにも団子状ロープを縛り付けた。
 流したロープが躍り上がらないためだとか。ナルホド!
 なが〜〜いシッポをくっつけ、安定したHINANO。
 さすが、艇長、日頃のお勉強が役立っています。拍手!! 

15:30 宮沢氏に最後の衛星電話連絡。

16:30 エンジン・スターター回らず。バッテリーは充分なのに?原因不明・・・。
 NINANOがこう言ってるようだ。
 「もう、島の人達に氷や冷水を差し上げる必要もないでしょ、エンジンの役目は終わりよ」
 座礁以来、冷凍冷蔵庫、照明、扇風機、衛星電話など、充電用のエンジンだったのだ。

18:00 本船と無線交信。

20:00 5時間で37マイル(約67,5Km)、平均速度7,4ノット。

21:00 本船と無線交信。本船船尾にはいつも一人か二人のワッチ(見張り番)がいて、
 手を振ると応えてくれるのがうれしく、心強い。私達も交代でワッチ、・・・
 といっても曳航ロープの安全を確かめることのみ。

22:30 アマチュア無線、シーガルネットとは交信できず。

3月19日(日)

00:00 天中に月、月光浴びて平らかに曳航されるHINANO。
 長くて重いしっぽ振りつつ、母の後を追いかける子犬のよう。
 頼れる母と子犬の航跡、月光の波が夜の海に真一文字の線を描く。
 視界には私達「一組」だけ。そして、月が見守ってくれている。

01:30 四分の一、通過。

02:00 海面ますます穏やかになり、平均速度8,7ノット。
 この天気が続きますように。明日、日没前に到着できますように。

06:45 日の出、本船と無線交信。

10:30 本船より無線呼び出し。「大丈夫か?」曳航ロープ、OK。
 200mのロープと鎖でドローイングロープを流した件、伝える。

11:00 3時間の平均スピード、9ノットオーバー!

13:40 半分通過、残航213マイル(388.7Km)。

15:00 本船と無線交信、「明日中にポンペイ着の予定」その後、スコール。

15:15 アマチュア無線、オケラネットの山田さんと交信。
 その後、風強し、時々大波。

18:00 本船と無線交信。波、風、真向かいのため、バウ(船首)が叩かれる。
 時々一発波くらう。二つ目低気圧、日本近海で発達中の影響か。

19:00 GPS、接続中止の警報。頻繁に鳴るためハンディGPSに切り替える。
 パンチングが激しいと鳴るようだ。とにかく今は、真向かいの風と波に叩かれ続けている。
 ジブ・トラベラーの甲板を叩く音が耳障りだ。日本で要チェック。

20:00 気圧、上がり出す。
 風子ちゃん(風力発電)のみでバッテリー充分(FULL)。
 エマージェンシー冷蔵庫、扇風機3台、(なにせ、暑い!)。

22:30 1ノット、スピード・ダウンしてもらう。

23:05 北緯05ライン通過。
 今日の始まりとはエライ違いや。
 お頼みもうします、マイクロ・グローリー様、曳航ロープ様。
 HINANOちゃん、ガンバッテ!!
 ローリング、パンチング、きしみ音、、、、激しい!どうなっとるんやっ!

3月20日(月)0時〜0時のデイラン(1日の走航)197マイル(約360Km)、
 平均速度8,2ノット。

01:00 艇速落としてもらって随分ラクになったが、まだ時々強いパンチングをくらう。
 GPSの警報止まる・・・?

04:00 風子ちゃん、働き過ぎ。過充電になりそうなので止める。

05:30 風子ちゃんは止まってるけど、風の音ビュービュー高まってくる。
 大スコールとハチ合わせ。艇速4ノット代にダウン。

07:30 風子ちゃんON(冷凍庫MAX30分、充電)

08:55 同上 OFF(バッテリー FULL)


11:30 風、急に落ちる。60度方向より5m程のうねり来るが、楽になった。

14:25 ポンペイ、ランドフォール!!うねり4m位。残航30マイル。

14:40 オケラネット交信。オケラ、シーガル両無線ネット各局にお礼。

15:30 島影に入り、うねりもなくなる。行く手に虹が迎えてくれる。18:00 リーフ見え始める。

18:20 パス通過、ポンペイ入港。

19:20 もやい作業終了。桟橋ではなく、マイクロ・グローリーに横抱き(船同士くっついて停泊)


キャプテン・ヨシローへお礼の挨拶。
航程420マイル(766,5Km)57時間(2日9時間)平均速度7,4ノット。

お・つ・か・れ・さま・でした!

こんなに高速で安全に曳航されたのは、マイクロ・グローリーの気遣いと
HINANOの丈夫さと、キャプテン・コーイチの各種ロープ取り回しがベストだったからと、
私、三等船員は思うのでありました。

ポンペイまで戻るのに、あの日から一ケ月以上・・・・。

曳航されて、たったの2日と9時間、遠くて近いカピンガマランギ。

「シャワーをどうぞ」というキャプテン・ヨシローの勧めを丁重にお断りし、
最後のHINANO BEERで乾杯、早々に、オヤスミナサイ・・・・。

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